図画工作科学習指導案
                                期 間 平成17年10月20日(木)〜
                                      平成17年11月24日(木)
                                場 所 六合村立入山小学校 5年教室・図工室
                                学 年 第5学年   指導者 荒木 孝史
 
T 題材名 「いろ・色はんを重ねてすって −美しい形や色の組合せを考えよう−」
 
U 考 察
 
1 子どもの実態
 
 製作の様子を見ると、子どもたちは、楽しく絵を描いたり、工作をしたりすることができ、熱心に作品をつくる姿が見られる。製作を通して、自分の思いを膨らませながら表現することに没頭できている。
 作品をつくり終えたあとの感想を聞くと、「楽しかった。」や「よくできた。」など、自分の作品ができたことの満足感や成就感が伝わる言葉が多く見受けられる。また、技能に関わる意見、例えば「細かなところまでかけた。」「のこぎりで切るのが難しかった。」などがある。しかし、どのような形や色を使って表わしたかやどのような美しさを表わせたかなどにつながる意見は少ない。
 このような実態から、子どもたちは、造形活動への関心や表現の意欲をもち学習しており、思いを作品に表わすための工夫や技能に目を向けていることが分かる。しかし、どんな形や色を使って表わしたかやどのような美しさを表わせたかなど、構想する過程に関心を向けることは少ないのではないかと考えられる。
 これまで見てきた子どもたちの作品づくりの様子から、次のような特徴を見ることができる。
○ 見通しをもち、試行錯誤をくり返しながら製作する子ども。製作の開始から完成までの構想をもち、工夫を加えながら製作する。
○ 製作を進めながら構想を深める子ども。試行錯誤をくり返しながら徐々に構想を固め完成に向かう。
○ 試行錯誤することが少ない子ども。製作の見通しをもつと、あまり試行することなく製作を進める。
○ 考えることに時間をかける子ども。机に向かったまま考え込むことが多く、あまり試行することなく製作を進める。
 このような作品づくりの様子から、子どもにより、構想の仕方や深まり具合、試行活動の取組方に違いがあることが分かる。
 どのような表現ができるかを試し、表現の結果を確かめながら作品をつくることができるようにするため、学習過程ごとのねらいを明らかにし、課題を解決するための試行錯誤をくり返せるようにする必要があると考える。
 
2 題材の考察
 
 多くの子どもたちは、絵を描いたり、工作をしたりといった表現活動に大変興味を示し、図工の授業を楽しみにしている。また、自分の思いを作品に表わすことにとても熱心である。
 しかし一方で、子どもたちの学習状況から、表現の深まりやその子らしさが表れるような表現の広がりが見られず、同じような作品づくりをしているととらえている教師が少なくない。
「興味をもち意欲的に取り組むが、表現が深まらない、広がらない」原因として構想を練ることの不足が考えられる。子どもたちは、自分の思いをどう表現していくか十分な見通しをもたないまま作品づくりを進めているのではないだろうか。
 そこで、子どもたちが作品づくりへの課題を明らかにし、見通しをもって自分の表現を追求していくことができるようにするために、構想を練り、試行錯誤をくり返しながら作品をつくり上げていくことができる題材を考えた。
 この題材では、多版多色による版画表現の方法を用いる。多版多色による版画は、それぞれの版の形や色を刷り重ねていくことで表現する方法である。この表現方法を用いることで、自分の思いを表すのにどのような図柄を刷り重ねていくか、刷り重ねたときの様子を思い浮かべながら、版ごとの図柄の形や色、その組合せについて考えを巡らせることができ、形や色の組合せに目を向けた表現活動を進めるのに適していると考える。
 版画の表現は、下絵づくり、彫り、刷りと製作の段階がはっきりとしている。そのため、自分の作品づくりの課題に合わせ、図案、彫り方、刷り方それぞれに課題の解決を図るための工夫を考え、試すことができる。
 また、学習の主題を「美しい形や色の組合せを考えよう」とすることで、子どもは学習の過程を通じて形と色、その組合せに目を向けることになる。このことにより、子どもは、自分がどのような形や色の組合せを美しいと感じるかについて考えを巡らせながら、自分が美しさをどうとらえたか確かめていくことができる。
 このように、この題材は、版画の表現方法を用いることで、子どもが自分の思いに合う形や色の組合せを見付けることに向かうことになり、学習活動を通じて、美しい形や色について考えを巡らせ、作品づくりの課題をつかみ、試行錯誤をくり返しながら自分の表現を追求できる題材と考えられる。
 
3 題材に関わる系統性
  第1学年及び第2学年 第3学年及び第4学年 第5学年及び第6学年
構想する力の向上に関する系統





 








 

 表わしたいことを進んで見付け,好きな色を選んだり,いろんな形を考えるなどしながら,思いのままに表す。


 








 








 

 表わしたいことを表わすために,形や色,材料などを生かし,それらの組合せの感じに関心をもち,美しさや用途など考え,計画を立てるなど工夫して表す。

 








 








 

 表わしたいことを表わすために,形や色,材料の特徴や構成の美しさなどの感じ,つくるものの用途などを考えるとともに,表し方を構想し,創造的な技能などを生かして表現する。
 








 
版画題材に関する系統














 









 

1年「ペタペタ ペッタン」
好きな形や色を選んで,楽しく絵にする。
 









 














 

3年「広がれ生きものワールド」
版の大きさや置き方,材料などを工夫して版に表す。
 














 
















 

5年「いろ・色はんを重ねてすって −美しい形や色の組合せを考えよう−」
形や色の組合せの美しさについて考え,自分が思い描いた美しい形や色の組合せを版画に表す。
 
















 

2年「うつして うつして」
好きな形や色を選んで,楽しく絵にする。
 

4年「すって,重ねて,組み合わせて −ローラー転写と木 版画を楽しもう−」
形や色の組合せの感じに関心をもち,偶然のおもしろさを楽しみながら感じたことを版に表す。
 

6年「色を選んで木版で表すと」
白黒の対比,色の置き方を考え,彫りや刷りの効果を確かめながら工夫して表す。
 






 

 
 
4 指導方針
 
 この題材の指導にあたっては、子どもたちが、自分の表現を追求できるように、自分の作品をつくるときの課題を明らかにし、試行錯誤をくり返しながら課題解決を図ることができるようにしたい。
 学習のめあてとして、子どもたちが「どのような形や色を使うかを考える」「製作の方法や手順を確かめ、見通しをもち製作する」「表わしたい美しさが表現できているか確かめる」ことができるようにする。
 題材に出会う過程では、形や色の構成が特徴的なパウル・クレーの作品を鑑賞し、お互いに意見を交換することで形や色の組合せの美しさについて考えることができるようにする。
 みんなで試す過程では、子どもたちが、自分の作品をつくるときの課題をつかむことができるように、みんなで試す学習「ためしてみよう」を取り入れ、グループで一つの作品をつくる。作品をつくるにあたっては、まず、グループでどのような作品をつくるか形や色の組合せを考え話し合う。次に、実際に試しの作品をつくりながら、いろいろの形や色の組合せ方や表し方を試してみる。最後に、出来上がった作品を見て、どのような表現ができるかを確かめ、お互いに意見を交換する学習を進める。
 自分の作品をつくる過程では、自らの課題を確かめながら作品を製作する。そこで、はじめに自分の作品をつくるときの課題を書き出しす。製作にあたる授業のはじめに課題を見直す時間を設け、自分のたてた課題と実際の仕上がりの様子を比べながら製作できるようにする。また、課題を解決するためにくり返し作品を刷ったり、製作の途中で彫りを直したりできるように、机や材料、用具の配置を工夫する。
 学習をふり返る過程では、試した組合せや自分の思いに合った組合せ、製作の詳しい様子、自分の表わしたかった美しさについて確かめ、確かめたことを文に表わしたり、意見を交換したりすることにより学習の成果を実感することで、自分がどのような美しさをどのように表してきたか分かるようにする。
 
 
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