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研究の構想図 | 研究のねらい | |
仲間とかかわり合う力をはぐくむために、ボール運動にコミュニケーションルールを取り入れることが有効であることを実践を通して明らかにする。 | ||
研究の見通し | ||
次のような過程においてボール運動にコミュニケーションルールを取り入れることにより、コミュニケーション技術が身に付き、仲間とかかわり合う力をはぐくむことができるであろう。 1 つかむ過程において、連帯感を高め合うことを第一と考えた仲間づくりゲームにコミュニケーションルールを取り入れれば、励まし合いや認め合いの技術が身に付き、自分のチーム内で、肯定的にかかわれるようになるだろう。 2 深める過程において、勝敗を意識した対抗ゲームにコミュニケーションルールを工夫して取り入れれば、勝敗に対する正しい態度がとれるようになり、自分のチームや相手チームと積極的にかかわれるようになるだろう。 |
研究の内容 | |
(1) 仲間とかかわり合う力をはぐくむことについて ここでいう仲間とかかわり合う力とは、仲間を誉めたり、励ましたり、また、仲間の意見に耳を傾けたり、仲間のアイデアを認めたりするといった、仲間と肯定的・積極的にかかわり合う力である。 本研究では、この力をはぐくむために、ボール運動に視点を当てた。 ボール運動は、相手チームと得点を競い合いながら勝敗を楽しむ運動である。そのため、勝敗によって感情が左右されやすい。勝敗の結果にかかわらず自分のチームによい雰囲気をつくり、みんなで成し遂げたという一体感を味わうには、チーム内で誉め言葉などをおくったり、受け取ったりするなど、肯定的なかかわりが重要な要素となる。また、相手チームに負けて悔しい思いをした時など、ミスをした仲間や相手チームを非難せずに、勝敗に対する正しい態度をどうとったらよいかという積極的なかかわりも大切であると考えた。 本研究における、研究過程は図1の通りであり、手だては次のようになる。 つかむ過程では、自分のチーム内の連帯感を高め合うことを第一と考え、チーム内で肯定的にかかわれるよう、仲間のよさを見付け、声をかけ合いながらルールを工夫して仲間づくりゲームを行う(ねらい1)。深める過程では、自分のチームや相手チームと積極的にかかわれるよう、勝敗を強く意識した時の励まし合いや相手チームへの賞賛の仕方を考え、作戦を生かし、チームワークを高めて、対抗ゲームを行う(ねらい2)。 このように、仲間との交流が多いボール運動において、段階的にコミュニケーション技術を身に付ければ、仲間とかかわり合う力がはぐくまれると考えた。 |
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図1 | ゲームのようす |
(2) コミュニケーションルールを取り入れることについて コミュニケーションルールとは、「仲間のよいプレーに誉め言葉をおくる」「仲間のミスに励ましの言葉をおくる」「いっしょに喜び合う」など、仲間とかかわり合うために必要な約束行動をルール化したものである。今までの体育の授業でもマナーや学習の約束として取り扱われてきたが、これをゲームや話合いの場にルールとして位置づけたものである。 まず、仲間づくりゲームの導入段階で、チームワークをよくするためには何が必要か話し合う。どんな時、どのようにコミュニケーションをとったらよいかという具体例をコミュニケーションルールとして児童に示す。児童はこれをベースに、チームや自分でできそうなことを選択し、実際に試してみる(リハーサルゲーム)。そして、その活動を振り返ってみることで、ルールの必要性を感じ取れるようにする。 次にねらい1、ねらい2、ゲーム大会へと進む。ねらい1では、技能や戦術の課題と併せて、コミュニケーションルールの中からチームや自分のめあてにすることを選び、それを、ゲームや話合いに取り入れていく。そして、コミュニケーションルールについても振り返りを行い、コミュニケーションルールを意識化していく。ねらい2やゲーム大会では、競争を意識したゲームのため、勝敗の結果により仲間同士やチーム間で様々な葛藤場面が想定される。勝っても相手への思いやりを忘れず、負けてもその悔しさをバネにしていけるようなコミュニケーションを考えていく必要がある。そこで、仲間づくりゲームに取り入れたコミュニケーションルールをチームで話し合い、工夫して積極的に取り入れていくようにする。このように、ゲームや練習のほか、作戦会議、振り返りなどの場においても児童はコミュニケーションルールを積極的に活用していく。また、コミュニケーションルールを効果的に活用するために教師は、各活動場面において児童の姿を見とり、適切な支援をしていくことが必要であると考える。 |
円陣を組む 作戦会議のようす |
研究の結果と考察 | |||
左のグラフを見ると、児童による毎時間の形成的評価は、おおむね右上がりに推移している。これは、仲間づくりゲームから対抗ゲームに進むにつれ、仲間と肯定的・積極的にかかわれるようになっていったといえる。因子別にみると、「集団的相互作用」と「集団的意欲」は、単元を通して高い評価を示している。これは、コミュニケーションルールを示したことにより、児童に具体的な仲間への励まし方などがわかりやすかったためだと考える。それに対し、「集団的人間関係」と「集団達成」は、はじめから高い評価ではない。勝敗に強くこだわる児童が対抗ゲームになって自己中心的な行動をとり、練習方法を仲間と相談せずに勝手に決めてしまうなどが原因で、評価が一時期落ち込む場面も見られる。しかし、その後、コミュニケションルールをチームで工夫して積極的に取り入れていくことにより、今まで以上にチームワークが高まり、仲間との一体感やチームでの連帯感を味わえたといえる。単元終了時は、「集団的人間関係」の評価が2.93と高く、最後の大会で全敗したチームも2.92と高い評価をしている。これは、勝敗を強く意識しているゲームこそ、コミュニケーションルールが大切であり、勝敗にかかわらず、仲間同士の肯定的・積極的なかかわり合いにより、チーム内で仲間と一体感を味わうことができたといえる。 |