毛筆楷書で漢字を正しく整えて書く力を 高めるマルチメディア教材の作成
 −基本的な点画・点画同士の接し方・字形に視点を当てて−

研究領域  国語  特別研修員   佐竹 秀樹

 漢字は一定の意味を表す符号として、その字特有の点画や字形を持っている。よって、文字として漢字を正しく整えて書くと言った場合、誰が読んでも同じに読み取れるように、正しい点画や筆順で字形を整えて書く必要がある。本研究は、基本の点画を書く筆づかいや点画同士の接し方、筆順や文字バランスの取り方が文字形成に大きく影響する毛筆楷書において、文字を正しく整えて書くための筆づかいの動きや字形バランスについて、児童が自らの必要に応じ、動画や静止画で分かり易く確認できるマルチメディア教材を作成し、漢字を正しく整えて書く力を育てようとしたものである。教材の構成に関しては、教材全体をWeb形式で構成することで、児童の必要に応じた内容が、メニューページ画面から自由に選択できるようにしてある。教材の内容については以下のようである。
 まず、「基本的な点画の書き方」に関する内容では、縦画・横画・はらい・折れ等、漢字の骨組みとなる9つの基本的な筆づかいの動きを動画で見られるようにしてある。更に動画に留意事項を文字で付記し、正しい筆の動きを確認しやすくしてある。
 次に、「基本的な点画の接し方」に関する内容では、点画同士の接する部分や交わる部分が透き通って見やすいように、漢字の筆跡を実線で表した静止画を用いる。深く接するのか浅く接するのか、直角にちかい形で交わるのか斜めに交わるのか、点画のどの位置で交わるのか等、点画同士が重なる部分に着色し、視覚的に接し方の様子がつかめるようにしてある。
 また、「筆順と筆順の原則」や「字形バランス」に関する内容では、毛筆文字の静止画を使い、筆順や適する筆順の原則を数字や文字で付記したり、漢字の周りを図形的に囲む実線を書き入れ、どのような字形バランスで書いたらよいかをつかみやすいようにしてある。
 この他にも、毛筆で文字を清書している様子を一連した動画で見られるようにもしてあり、筆づかいの動きや筆順、字形バランスの取り方等を総括的に確認できるようにもしてある。
 実践ではこの教材を使い、4年書写の文字である「歩く」を毛筆楷書で書き、基本の点画を書く筆づかいや点画同士の接し方が正しく書けていたか、整った字形バランスで書けていたかを検証し、本教材使用前と使用後でその割合を比較し、本教材の有効性を確かめた。

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